夢の記録

水を飲み過ぎた さかなのような

犬の死骸

近所の公園で猫が犬を食べている
ぼくは泣き虫だからよくそれを見ている
 
猫がはらわたをひきずり出すさまを見ながら
そういえば ぼくもこうだっただろうか と思う
猫は首輪を引かれて持ち主のもとへ帰ってゆく

色とりどりの猫が並んできれいだった
心臓が透けている猫
両足が細く飛べる猫
標本になった猫
 
ぼくはどの猫も取らずにレジに向かう
 
「お気に召しませんでしたか。」
「いえ。でも猫は嫌いなんです」
 
店員が悲しそうな目をすると、猫は腹から2つに割れた
断面がつやつやして魚みたいだった。
 
「これは売り物ですか。」
「いえ、でも、買うことはできます。」
 
ぼくはそれを買って帰った。
 
昨今では犬が猫の死骸を食べるらしい。
隣の家の少女が嬉しそうに死骸を握りしめている。
エサ用の死骸。死骸パウダー。
骨だけになったそれを人はもう死骸と呼ばないらしかった
そんなはずはない。あれは確かに死体だ。
 
蟻が群れを作っていた。まっすぐに、まっすぐに歩いていた
ぼくがレジに並ぶのを見るとにやりと笑う
 
ぼくは少し憤った。肉厚な死骸が袋の中で揺れた
バサバサと鳥の音がした。壊敗した匂いにえづいた
 
次の瞬間、ぼくはもう、蟻のことを忘れている。
猫は食べ物である。