20200420(かなり明晰)
クジラと一緒に海に沈んでいく。
青い海は美しくて透明ですごく気持ちがよかった。きれいだ。
夢の中で好きな人という設定の少年が、わたしも知っている女の子とギターを弾いていた。曲を作っていた。いいなー。そこにわたしはいないけれど。誰かと音楽を作るのはいいことだ。ひとりでは見えない世界が見える。わたしもそこに行ってみたかった。
ピアノの音が聞こえた。青くどろりとしてセブンスの音が鳴る。
沈み続けるのにいつまでも青はやまない。
顔を洗い損ねたまま眠ってしまったようだった。
「あなたがすきよ」
昨日聞いたサンプリング音声が耳元に蘇る。ストーリー仕立ての環境音楽。誰に向けられたわけでもなく形骸化され、何度も反復されるそれを聴くたび、わたしは張り裂けそうなほど胸が痛くなる。その声を聴くのは初めてじゃなかった。去年の秋にも同じ声――それは歌声の姿をしていた――を耳にし、狼狽し数日間苦しめられ続けた。美しい旋律に軟な声はふわりとして悪魔だった。
画面の向こうから立ち現われ消えゆく文字。人。もう何年こうして眠っているのだろう。このまま一生覚めないでいてほしい。音楽と一緒に声が話しかける。やめてほしかった。失ったものに振り回されたくはないから。いつか失われるかもしれないものを、希望だと認識したくはない…